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頭のいい人とさほどでもない人を分ける決定打

コラム
04 /22 2021
誰もが大量の情報を簡単に手に入れられる今、オリジナリティーのある発想力がより強く求められています。
ではオリジナリティーとは何でしょうか。『東大教授が教える知的に考える練習』の著者、柳川範之・東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授が本書より解説します。

■オリジナリティーは完全にゼロからは生まれない

 私たちは、オリジナリティーと聞くと、ゼロから考え出すものだと思いがちですが、そうではありません。まずは、従来からあるものを組み合わせたり、さまざまなものを取り入れる段階があります。自分のオリジナリティーを出すのは、そこからどのように変えていくかにかかっているのです。

 私が論文を書くときも、そういう発想をしています。一からモデルを組み立てていくことは少なくて、ある問題意識で論文を書きたいと思ったら、経済学におけるさまざまな分野の論文を読みあさるのです。書こうとしているテーマとは違う分野の論文もありますが、それでいいのです。そうすると、「この論文に書かれたモデルは自分が考えている問題意識に使えるかもしれない」、あるいは「このデータ分析の方法は使えるかもしれない」というように結びつくわけです。

 すると、そのままでは使えなくても、自分の問題意識に合わせる形でその論文の骨組みやデータを持ってくることは可能です。

 論文の形がある程度まとまってくると、今度は追加で分析するために、何か良いアイデアはないかと、またいろいろな論文を読みあさります。そうすると、「この話は少しくっつけると面白いかもしれない」ということが出てきて、論文の幅が広がっていく、というように進んでいきます。

 もちろん、これは他人の表現を真似るという意味ではありません。そもそも、言葉というのは私たちが自由に発明するたぐいのものではなく、誰もが共通して認識できるものでなくてはなりません。印象的な表現や斬新なコピーもすべて、すでにあるものをどう組み合わせるかにつきるのです。

そう考えると、完全にオリジナルな言葉や表現というものはないとわかります。

 例えば、アインシュタインにしても、ピカソにしても、独創的で天才だという扱われ方をしていますが、けっしてものごとをゼロからつくりあげたわけではありません。頭のトレーニングをきちんとこなすことができれば、誰でも思いがけないものをつくり出すことが可能なのです。

 とくに、これだけ情報が流れている現代では、新しいものをつくり出すベースになる情報は、世の中に満ちあふれています。新しい組み合わせを見つけ出せるチャンスは広がっているのです。

■抽象化する力を高めて、頭の中で化学反応を起こす

 それでは、新しい組み合わせは、ただ組み合わせてみればよいのでしょうか。

 組み合わせる、くっつけるといっても、単に別々のものをくっつけてみるだけでは、新たな発見や進展は見えてきそうにありません。大事なのは、そこで化学反応を起こすことです。

 では、化学反応を起こすにはどうすればよいのでしょうか。

 そこで大切になるのが、抽象化する頭の使い方です。この抽象化の力を高めて、まったく異なっているように見える情報を結びつけていくことが有効になります。

 そのためにどんな頭の使い方をすればよいのか具体的に考えてみましょう。

 歴史の事例を見ていくと、気がはやって不確かな情報に飛びついた戦国武将が、重要な戦いに負けたというような話が出てきます。これを現代の自分の置かれた状況への教訓にするには、このエピソードを簡単な言葉で表して、話を抽象化して、頭の中に入れておくことが有効です。これは、基本的には思考の土台をつくるために、情報を抽象化する作業ですが、さらに発展させていくことを考えてみましょう。

 このエピソードには、もともとさまざまなデータが詰まっています。その戦国武将の名前はもちろんのこと、相手の武将の名前、戦いのあった日時や場所、不確かな情報とは何か、どれほどの負けっぷりだったのか、等々です。

 もし、このエピソードを自分のビジネス上での判断に役立てようとすると、このエピソードをそのまま使っても意味がありません。そこで、抽象化が必要になります。

 当たり前ですが、武将の名前は誰でもよく、そもそも武将である必要もありません。日付も場所も不要です。そして最終的に、「トップが、あやふやな情報をもとに早まった決定をするのは失敗のもと」という骨組みだけの情報に置き換わるわけです。この作業が抽象化であり、情報の骨組み化です。


 そのあとで、今度はこの骨組みの情報に、私たちの身近なデータを肉付けしていくのが具体化という作業です。例えば、抽象的な「トップ」という表現を、「社長」あるいは具体的な固有名詞の「○○代表取締役」に置き換えたり、「あやふやな情報」の部分に具体的な情報の内容を当てはめます。もちろん、もっと具体的なデータを加えてもいいでしょう。

 こうすることで、戦国時代のエピソードが現代の教訓となるわけです。

 歴史の本を読んで現代に生かそうというとき、私たちは意識するしないにかかわらず、こうした作業をしているのです。抽象化では、固有名詞を普通名詞に変え、細かいデータの部分をカットしたのち、普遍性のあるメッセージだけの骨組みにします。具体化では、逆に普通名詞を固有名詞に変え、具体的なデータを当てはめていくということをしていくわけです。

 歴史を勉強していくときに、織田信長がいつどうした、豊臣秀吉が何をしたという事実を頭に入れるだけでは、それは単なる知識にすぎません。そこからは、自分の悩みに対する示唆は得られないのです。

 歴史を単なる知識に終わらせるのではなく、そこから何かを汲み取ろうとしている人は、無意識のうちに先ほどのような頭の使い方を行っています。そして、それを自分のことに置き換えたうえで、例えば「あの豊臣秀吉も自分と同じようなところで悩んでいたり工夫をしたりしていたのだろう」と共感を覚えたり教訓にしたりします。

 これは実は、抽象化した情報を、具体化させたり自分に置き換えたりする工夫をしていることを意味しています。

■異分野に転換させる頭の使い方を意識する

 このように、考える力を高めていくには、「具体」と「抽象」の双方向のトレーニングが大事です。これは、たとえるとジュースの濃縮と還元に当たります。

 「具体→抽象」というのは、絞ったジュースをいったん濃縮すること。そして、「抽象→具体」というのは、また水分で薄めて還元することに当たります。この2つの作業を繰り返すことが、思考を高めていくには欠かせないのです。


 世の中のニュースを自分の身近な世界に当てはめたり、自分に引きつけて考えるという行為は、こうしたことを頭の中で行っているはずです。それを無意識の習慣にできるところまで徹底できると大きな武器になります。

 もちろん、同じように抽象から具体に進めて理解するのでも、経済学の抽象的な理論を経済や経営という同じ分野の具体的な問題に当てはめるだけでなく、もうワンステップ展開して難易度を上げ、経済学以外の異分野に転換させる頭の使い方を意識してみるといいトレーニングになると思います。

 「具体」と「抽象」の双方向のトレーニングが身についてくると、どんな分野の情報が入ってきても、ほかに転換して応用できるようになります。
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